金属素材事業本部 鉄亜鉛特殊管事業部インド分室設立準備室付
草屋根トタン葺共存模索検討部会委員 エコロジカル・トタンナー 曽我建築

トタン塗りが教えてくれたこと

雫石のトタン塗りに参加して、「はたらく」ということについて考えた。


屋根の上の作業は生半可な気持ちでは出来ない。

日差しの強い日は、屋根の表面は60℃以上になる。目玉焼きができそうな熱い屋根の上で、単調な作業を繰り返す。刷毛の使い方に集中する。ちょっと気を抜くと塗り残しができたり、ムラになってしまう。それでも、トタン塗りがとても印象的だったのは、頑張れば頑張っただけいいものができる。その繰り返しがとても気持ちよかった。
そしてこの作業を通じていろんな気づきがあった。


いまはいろんな情報が飛び交っていて、どれが本当でどれが偽物なのか、なにが真実なのかわかりにくい時代だと思う。
でも、トタン塗りをしてみて、大事な感覚を取り戻したように思う。いま飛び交っているいろんな情報を「知識としてはいってくる情報」としたら、トタン塗りは「自分の身体体験を通じてはいってくる情報」とでもいうべきか。
頭でいくら考えてもわからないことがある。でもやってみると、思いもよらない気持ちになったり、自分にはこんな感覚があったのかと驚いたり、、、
やる前には想像もしなかった気づきがある。


なにがリアルなのかよくわからない今を生きているからこそ、自分のリアルな体験を積み重ねていく時間というものを持つことが大事なのではないかと思う。


トタン塗りは最高に気持ちがよかった。
気づいたこと、、、自分たちの力全部出し切って作業して、ぐてっと疲れたら、おいしいものたべて、いい湯につかってぐっすり眠る、この気持ちの良いサイクルの中になくてはならない要素として「はたらく」ってことがあるんじゃないかってこと。

「はたらく」ことって、きっと本当はその行為自体に癒しを含んでいるものなんだということ。だからあえて癒しなんてものは必要ないんだ。


トタン職人この道30年の平子田さんは「この仕事を嫌だと思ったことは一度もねえよっ」って素敵な笑顔で語ってくれた。
こんな言葉がさらって出てくる生き方を僕はできているだろうか。

トタンを塗ることで、いろんな人とつながっていく。
トタンを通して世界が広がっていく。
本来あるべき「はたらく」ってことの意味を雫石で見つけた。
トタンの素晴らしさと一緒にトタンを取り巻く物語を伝えていきたいと思う。




■プロフィール

そがけんちく・・・かんがえちゅう